横尾忠則さんが手掛けた愛知県犬山市のポスターが数量限定で発売されます!
横尾忠則さんのご紹介
横尾忠則さんは、20歳でグラフィックデザイナーとして世に出ました。そして1969年に第6回パリ青年ビエンナーレ版画部門グランプリを受賞し、72年にはニューヨーク近代美術館で個展が開催されるなど、一躍世界で認められるアーティストとなりました。日本人のアーティストとして最も早くに海外で評価を得た人です。
横尾さんの活動はデザイン界にとどまらず、70年大阪万博「せんい館」の建築デザイン、モーリス・ベジャールのベルギー国立20世紀バレエ団のミラノスカラ座公演「ディオニソス」の舞台美術、さらには大島渚監督の映画「新宿泥棒日記」に主演、テレビドラマ「寺内貫太郎一家」で謎の人物を演じるなど、実に多岐にわたります。執筆活動も旺盛で、多数のエッセイ集の他、小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞を受賞しています。
82年には「画家宣言」し、以後、多彩にして自由闊達な絵画作品を描き続け、国内外で数えきれないほどの展覧会が開催されてきました。国内外の受賞も、ブルーノ国際グラフィックデザイン・ビエンナーレ展特別賞、ワルシャワ国際ポスター・ビエンナーレ展金賞、ニューヨークADC賞金賞、日本文化デザイン大賞、高松宮殿下記念世界文化賞など多数受賞しています。
近年では2021年「GENKYO横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」展の東京都現代美術館に600点余の作品を展示する大回顧展を開催し(愛知県美術館からの巡回展)、コロナ禍中にも拘らず8万人もの入場者を集め、2023年には、通常日本の古美術・文化財を展示収蔵する東京国立博物館で、現代美術家の初めての個展として「横尾忠則 寒山百得」展が開催されて大きな話題となりました。また同年、芸術院会員、文化功労者にも選ばれています。また今年2025年には世田谷美術館で、遠い昔に郷里の川辺で同級生たちと撮った記念写真のイメージを起点に制作された「連歌」ならぬ「連画」新作群による大規模な個展「横尾忠則 連画の河」展が開催されており、89歳の今も旺盛な活動を続け、その動向、新作群が世界中から注目されています。
このようにアート界の巨星ともいえる横尾さんですが、画家宣言以降も、多数のポスターデザインを手がけてきました。今回制作される「INUYAMA & YOKOO」ポスターシリーズは、横尾さんのポスター作品群のなかでも重要な作品シリーズになるでしょう。
横尾忠則さんと犬山市のアートな縁
約60年前の1966年、すでにグラフィックデザイナーとして活躍していた横尾忠則さんは、初めての絵画作品による個展「ピンクガールズ」を銀座の南天子画廊で開催しました。その作品群の中に、お城のお堀で泳ぐピンクの女性が描かれた「お堀」(写真参照)という作品があります。この作品はその後も横尾さんによって反復して描かれており、横尾さんの初期の代表作の一つとなっています。
そこから時を経て2008年3月、横尾さんは『温泉主義』の取材で犬山温泉を訪れます。その際に宿泊した温泉宿が木曽川を挟んで犬山城を見渡す場所にあり、そこで横尾さんは、あの「お堀」に描いた背景が、この木曽川とそのほとりの小高い丘の上にある犬山城の天守のイメージだったことに気づいたのです。さらに明治の重要な建築を移築保存している「博物館明治村」や、世界各地の伝統的な建物を移築、復元展示している「野外民族博物館リトルワールド」(いずれも名鉄グループによる建設運営)を見学して、歴史的、世界的に重要な建物遺産を保存展示している犬山市の世界的にも他に例のない特徴を知りました。
そして2024年11月、犬山市観光協会から、犬山市をテーマにした作品制作をお願いできないかという依頼を受け、60年近く前に描いた「お堀」の背景の天守が犬山城であったことを改めて確認し、その運命的な因縁がきっかけとなって、犬山をテーマにした創作を考えはじめました。そこから、犬山城や明治村やリトルワールドなどの歴史遺産のイメージをもつ犬山市をファンタジーな横尾ワールドとして描いてみたいという思いが生まれました。
横尾さんは、歴史遺産をただアピールするだけでなく、そこに横尾さんによる現代アートが加わることで、歴史遺産が新たな生命を持ち、新しい犬山のイメージが生まれると考えています。
「INUYAMA & YOKOO」ポスター第1弾
今回の「INUYAMA & YOKOO」ポスター第1弾は、1966年に横尾忠則さんが初めて発表した絵画作品「お堀」(徳島県立近代美術館蔵)に描いた光景が、実は木曽川と犬山城だったという奇縁から、犬山市を盛り上げようという横尾さんの思いによって制作されました。この「お堀」は横尾さんの初期代表作のピンクガールズシリーズの1作ですが、「お堀」はその後もいろいろな形で反復作品が制作されています。そうしたいくつもある「お堀」作品シリーズを網羅的、集大成的に考えられたのが、今回の「INUYAMA & YOKOO」ポスター第1弾なのです。ポスター画面の中の泳いでいる女性たちを、「お堀」作品シリーズと見比べてください。